4. スクイズ (squeeze)⑤
4-5. 珍しいスクイズ
X. コンパウンドスクイズ (compound squeeze)
コンパウンドスクイズには、ペンタゴナル(pentagonal)とヘキサゴナル(hexagonal)、サチュレイテッド(saturated)スクイズがあり、非常に珍しいスクイズです。また、純粋なブリッジのプレイテクニックという意味ではおそらく最も難しいです。
趣味で書いてます(笑)似てる上にとてもややこしいので基本的にはペンタゴナルだけ触れます。
参考:Nicolae Sfetcu著『The Bridge Game』,2004
初めて習った時から百以上の試合には出ていますが、実戦で見たことはありません。
正確にはあったかもしれませんが気が付きませんでした。スクイズのことを知らずに初見で気が付いたならZiaやHelgemo、Meckstrothなどの歴史に名を残すブリッジプレイヤーになれる素質は間違いなくあります。
ペンタゴナルスクイズは1巡目に片方のディフェンダーをトリプルスクイズにかけて、2巡目に左右がダブルスクイズにかかる形にするものです。1回目のトリプルスクイズではディフェンダーはウィナーを捨てているわけではないので、増えるウィナーの数は1つです。
左右合わせて延べ5つのスートでスクイズが発生しています。
ヘキサゴナルスクイズは1巡目に両方のディフェンダーを共通する3つのスーツのトリプルスクイズにかることで、2巡目に左右がダブルスクイズがかかる形に持っていくものです。
左右合わせて延べ6つのスートでスクイズが発生しています。
サチュレイテッドスクイズは全部のスートでスクイズがかかります。この形のスクイズは意図して作ろうと思っても難しいです。スクイズの最終奥義形として少しだけ触れます。
ペンタゴナルスクイズの例を見てみましょう。
ウィナーの数は現在5つ、6勝を目指します。
♣Aで1回目のスクイズが飛んできます。
Wが♠を捨ててしまうと、Eがトリプルスクイズにかかります。♦Aは当然捨てられません。♠3枚を守れるのはEだけになっているので♥を捨てるしかありません。ここで♥AでNにわたり、♠Aで帰ってくると参考図1になります。ここで♣KがEは激痛です。Wは何を捨てても関係なく、Nが♥Jを捨てるとEはオートマチックスクイズにかかります。
こうなるのを避けるためにはWは♣Aの時に♥を捨てるしかありませんでした。しかしこれでもEは詰んでいます。♦Aは同様に捨てられないので、捨てるものは♠と♥の2択です。
♠を捨てると♠K♠Aの順にとって参考図2になります。Sから♣Kが飛んできて、EWがダブルスクイズされています。どちらも♥を守れません。
♥を捨てると今度は♥A♠Aの順にとって参考図3になります。Sの♣KでEWはやはりダブルスクイズにかかります。どちらも♠が守れません。
非常にややこしいので少し整理してみてみましょう。
1回目のスクイズが起きる前はWが♠と♥、Eが♠と♥と♦を守っていました。しかし、最初のトリプルスクイズの時、Wが♠の守りを外してしまうと、Eは♥を放棄しても、一人で♠と♦を守らなければならなくなり、オートマチックスクイズにかかります。
そこでWは♥を捨てました。♥は1枚捨ててもKの2枚なのでWは♥の守りを放棄していません。しかしEが自分しか守れない♦を残して♠か♥を捨てると、あきらめたほうはW1人の担当になります。このように「2つある、2人がかりで守っているスート」のうち一つを、1回目のトリプルスクイズで一人しか担当できないようにして、ダブルスクイズを通しています。
サチュレイテッドスクイズは右のようなものです。
類似のパターンがいくつか発見されているらしいので、興味のある人は調べてみてください。僕はこの形しか知りませんでした。
まず♦AをSからプレイすると、Eがまず3つのスートでスクイズにかかります。♣を守らなければならないので♠か♥を捨てる必要があります。どっちでも同じなので♥を捨てたことにしましょう。その後♣AがSからプレイされると今度はWがトリプルスクイズにかかっています。Eが♥を放棄したのでWは♥を捨てられません。♦を守っているのはWだけなのでWは♠を放棄します。Nも重要な任務を完了した♠2を手放しましょう。
Sから2度目の♣が来るとWはついに詰みます。Wは♥Aと♦QJの3枚から1枚捨てなければなりません。しかしNに♥2と♦K4が待ち構えています。
W♠♥♦の3つ、Eを♠♥♣の3つでスクイズにかけています。