こんばんは鶴です。
最近こんな質問をされました。
「プロブリッジプレイヤーって1回やったボードの全員のハンドとプレイ全部覚えてるじゃないですか。それも何十ボードもプレイするのに全部。相当記憶力がいいんですよね」
この質問をプロじゃなくてなぜ僕にしてきたのかは謎ですが、僕なりにちょっと考えてみました。
確かに質問はその通りで、プロブリッジプレイヤーは何十ボードもある1日のハンドとそのプレイをほとんど記憶しています。というか僕レベルでもだいたい記憶していますし、集中してやった重要なボードは52枚全部記憶しています。
なぜこんなことができるのか、これには2つ理由が考えられます。
①まじで記憶力がいいパワータイプ
世の中には信じられないほどに記憶力がいい人が存在します。
つまり力業で覚えているわけです。
僕は結構数列の短期記憶は得意なほうで、神経衰弱ぐらいなら一度見たカードはすべて覚えられます。ブリッジ界隈でも同じことができる人は多少いると思います。でも上には上がいます。ブリッジプロもほとんどの人がオリジナルの記憶力は良いほうでしょう。でも全員が全員そんなわけではないと思います。
これは雑談記事なので、ブリッジと関係ない話ですが、僕が人生で出会った中で最も記憶力が良い友人の話をします。
高校で出会ったH君は常人には理解できない記憶力をもつ個性的なキャラで、その場で見た歴代アメリカ大統領、歴代天皇、周期表や円周率を自然対数の底で割った特に意味のない数列などなんでも1発で記憶していました。その日の午前中に覚えてーっていうと、昼にはしっかり覚えて、当時はやっていたお笑いの、3がつく数字と3の倍数の代の天皇の時にアホになる芸をやってくれました。
印象的過ぎて今でも覚えています。
②記憶を連結して流れで覚えているタイプ
書きたかったのはこっちのほうで、おそらく大半のプロがこっちなんじゃないかと思っています。
昔大学生のころ、選択授業で囲碁を勉強するというものを取ったことがあります。
石倉9段(プロ)という大学の大先輩が授業をしてくれました。授業の最中にこんな一幕がありました。
学生たち(みんなルールを授業で知ったぐらいの素人です)がさした囲碁を黒板で再現したときに9路盤の棋譜を記憶できていなかったのです。これまでプロ同士の19路盤のお手本の局は間違えたことがないのにです。当然9路盤のほうが19路盤より手数も短いので記憶しやすいはずです。その流れで石倉9段がどうやって覚えているのか知ることができました。囲碁の手にはすべてに重要な意味があり、その場所に打たれた考えが存在すること、そもそも直観と合う手は数手しかなく、意外な手は印象に残るということを利用しているようでした。
要するに、『19の9』のように数字で覚えているわけではなく、『相手が攻めてきたから、ここは守ろう、お、このプロは固く守るんだな、じゃあここか』というように意味で覚えているようでした。
ではどうして初心者の手は覚えられないのか、それは初心者の手には合理的な意味が存在しないので『19の9』のような記憶をしなければならないからです。
話をブリッジに戻しましょう。ブリッジでも同じことが起きていると僕は思います。
ブリッジが強い人はビッド展開で全員の大体のハンドのイメージが出来上がっています。
そしてダミーを見て、プレイあるいはディフェンスの方針を考えます。
1トリック目の自分のカード、ダミーのカード、パートナーのカード、そしてディクレアラーのカードを見るとそこから全員のハンドのイメージを修正します。
2、3トリックやったら大体もうイメージが完成していて、それに沿ってプレイします。もしイメージと違ったら印象に残るし、そうじゃなくても脳に全体の流れが残っています。
あとでハンドの話になった時は、一個一個のカードを思い出しているのではなく、全体の流れを思い出しているのです。
僕はどっちかというと①のパワータイプですが、集中力が切れて記憶していなかったハンドは全体の流れ、結果、試合中に考えていたことの断片的な記憶をつなぎ合わせて記憶を復活しています。プロはおそらくこの動作が慣れているのだと思います。
上級者になればなるほど試合中に考えていることが多いので、この断片的な記憶の断片の数が増えていき記憶は再生しやすくなります。
たとえばパートナーから4ぐらいの小さいカードがプレイされたときにも、
初心者と上級者では考えていることが全然違います。その時考えていたことを取り戻すのは比較的簡単なことなのです。
将棋でも囲碁でもブリッジでも、おそらくそのほかの競技でも、上級者がプレイしたものを覚えられるのは流れで記憶しているからで、逆に言うと記憶力がいいから上級者になれるというのは僕は違うと思います。
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